ソラナのアップグレード、ネットワーク強化もバリデーターには打撃＝ヴァンエック

資産運用会社ヴァンエックによると、ソラナ（Solana）のプロトコルアップグレードはネットワークの長期的な健全性にとって重要だが、一方でバリデーターの収益に打撃を与える可能性があるという。

3月、ソラナのバリデーターは、ブロックチェーンプロトコルに関する2つの提案、いわゆる「ソラナ改善提案（Solana Improvement Documents、SIMDs）」について投票を行う予定だ。これらの提案は、ステーキング報酬の分配を確保し、ネットワークのネイティブトークンSOLのインフレ率を調整することを目的としている。

ヴァンエックのデジタル資産リサーチ責任者であるマシュー・シーゲル氏は3月4日のX（旧Twitter）投稿で、両提案が「大きな論争」を引き起こしていると指摘。その理由として、バリデーターの収益が最大95%削減され、小規模な運営者の存続が危ぶまれる可能性がある点を挙げた。

「これらの変更によりステーキング報酬は減少するかもしれないが、インフレ率を下げることはソラナの長期的な持続可能性を強化する重要な目標だと考えている」とシーゲル氏は 述べた。

SOL’s staked supply has risen since 2023. Source: Coin Metrics

ステーカーへの報酬分配

1つ目の提案である「SIMD 0123」は、「ソラナの優先手数料（Priority Fees）をバリデーターのステーカーに分配するためのプロトコル内メカニズムを導入する」ものだと、シーゲル氏は説明する。トレーダーは取引の処理を迅速化するため、バリデーターに追加の手数料を支払うことができる。

シーゲル氏によると、優先手数料はネットワーク収益の40%を占めるが、現在、バリデーターはこの手数料をステーカーと共有する義務を負っていない。一方、バリデーターは投票報酬などの他の収益はステーカーに還元する必要がある。

この提案は3月6日に投票が予定されており、ステーキング報酬を増やすだけでなく、「トレーダーとバリデーター間のオフチェーン取引契約を抑制し、オンチェーンでの実行を強化する」狙いがあるとシーゲル氏は述べている。

ソラナのステーキングは、SOLをバリデーターに担保としてロックする仕組みだ。ステーカーはネットワーク手数料やその他の報酬としてSOLを受け取ることができるが、バリデーターが不正行為を行うと「スラッシング」によってSOLを失うリスクもある。

Solana network revenues from fees and tips. Source: Multicoin Capital

インフレ調整

2つ目の提案である「SIMD 0228」は「今回の提案の中で最も影響力のあるもの」だと、シーゲル氏は指摘する。

この提案は、SOLのインフレ率を、ステーキングされているトークン供給量の割合に応じて逆相関するように調整するもので、シーゲル氏は「希薄化を抑え、ステーキング報酬を収益として扱うステーカーからの売り圧力を低減する可能性がある」と述べた。

コインメトリクスがコインテレグラフと共有したレポートによると、2024年2月時点でソラナのインフレ率は4%となっている。これは当初の8%からは低下しているものの、最終的な目標インフレ率である1.5%を依然として上回っている。現在、インフレ率は年間15%の固定率で減少している。

この提案は、主にマルチコイン・キャピタル（Multicoin Capital）のヴィシャル・カンカニ氏によって起草されたと、ChainCatcherは報じている。マルチコインはJitoの「大規模な持ち分」を保有しており、Jitoはソラナで最も人気のあるステーキングプールだ。同社の3月のレポートによれば、2023年12月時点で、ソラナのバリデーターの93%以上がJitoのソフトウェアを利用し、ブロック生成の収益を最大化しているという。

この提案が進められる中、資産運用会社は規制当局に対し、SOLの上場投資信託（ETF）の米国取引所での上場を許可するよう求めている。発行企業の中には、ETFのリターンを向上させるため、仮想通貨ステーキングをETF内で許可するよう米国規制当局に要請する動きも出ている。

ブルームバーグ・インテリジェンスによると、2025年にSOL ETFが承認される確率は約70%と見積もられている。

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